苦い。薬を飲んでいるような気になった。甘さをとばした養命酒に焼きたてのパンの匂いがちょっとあった。少しだけど焼きたてのパンの匂いがあったのはかろうじて飲めるものにしていたが、ほとんど苦悩だった。持てあましてしまったので2杯で飲むのをやめてしまった。
以前どうしようもないシャンパンは冷凍庫にいれることでなんとかしたが、これも冷凍庫でシャーベットにしてみようかと考えたくらいだったが、結局それすらも面倒になってやめてしまった。
前回のユリス・コランと同じく、飲むことが苦行のようなシャンパンを販売会社の紹介文につられて選んでしまったが、共通するところはどれも出荷本数が少なく希少性があり、テロワールを如実に表した、ピノノワールだけで造ったシャンパンである。テロワールを表したといっても、どこがどう表れているかなんてわかりっこないのだから、そういうものに動かされてしまうのはつくづく甘いなあと思うのである。紹介文でテロワールという言葉に魅力を感じたら、おそらくそれは魔術にかけられているのだろう。なんとか惑わされないようになりたいものである。
今回のペユ・シモネはかなり凝っていてFins Lieux(ファン・リユー)シリーズは単一区画、単一ヴィンテージ、単一品種によるテロワールに焦点を当てたもので、このシャンパンの区画は翌年所有者が変わったため最後のヴィンテージとなった。そういうところにも購買欲を煽られたのだろう。
大手メゾンがプレステージキュヴェの原料ワインとして争って求める最上級のピノ・ノワールの造り手。
<< 販売サイトの紹介文より >>
グランクリュ100%の自社シャンパーニュは、テロワール本来の果実味とミネラルを表現し、フィネスを追及する信念のもと、マロラクティック発酵を行っていません。”Fins Lieux(ファン リュー)”シリーズは単一区画・単一ヴィンテージ、単一品種によるテロワールに焦点を当てた特別なラインナップ。グランクリュ・マイィ村のビオロジックにて認証管理(Ecocert)された区画「レ・プール」産のピノ・ノワール100%による2つ目のブラン・ド・ノワールです。
100%樽発酵・樽熟成でドサージュは4g/L。比較的平地で標高が低く、心土に粘土質が多く、ヴェルズネイ産と比較すると果実味の厚みのあるふくよかな味わいが特徴的です。
3日後、まったく期待もかけず飲んでみると苦さは消え、いいワインにあるような絹のような飲みあたりになっていて心地よいシャンパンに変わっていた。抜栓してすぐには飲めないシャンパンはたしかにあるんだなあと思うと、昔パリ8区にあるタユヴァンに行ったときに、隣のテーブルの派手な服装をしたブリリアントな雰囲気の若い男が注文したシャンパンを一口飲むなり、デキャンタージュさせていたことを思いだした。給仕が2人がかりで抱えてきたデキャンターはアルペンホルンのようで扱いは大変なはずなのに、そんなデキャンターを扱うのに見苦しいところはなく、物慣れたサービスをしているのに驚いたことがあった。一口飲むなりデキャンターを頼む客にも、それが奇異なことに思えないような周囲にも、さすが本場ならではの光景だと感心したことを覚えている。
いつかレストランですぐに飲めないようなシャンパンにあたったらデキャンタージュをお願いしてみようと思うのだった。
このシャンパーニュの仕様
ブドウ品種構成 | ピノノワール100% |
デゴルジュマン時期 | 2017.05 |
甘辛度 | Extra-Brut(4gr/L) |
ヴィンテージ | 2011 |
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