前回に続き今回もゴッセである。歯切れのよい2音節からなる一度聞いたら忘れられない響きのゴッセ。このメゾンは数あるシャンパーニュメゾンの中でも名前が耳に残るということでは屈指ではなかろうか。私はこのサイトを始めるにあたってどのシャンパーニュから取り上げようかと考えたときに、まず浮かんだのがゴッセである。シャンパーニュメゾンの名前はややこしいところが多い。有名どころをあげると、ルイロデレール、テタンジェ、モエ・エ・シャンドン、ローラン・ペリエ、ドゥラモットなどどれもこれも初めて耳にする人にとっては一聴して覚えられるようなものではない。前回の投稿でゴッセをよくも悪くも普通のシャンパーニュであると評してしまったが、今回取り上げるゴッセ・グラン・ブランノワールはじつに優雅なものだった。
前回の経験からゴッセは冷やしすぎないほうがよいと知っていたので、やや氷を少なめに入れたバケツの中で15分(前回は30分)冷やして飲むことにした。温度は計っていないが、おそらく12度くらいである。香りは甘いリンゴだが、前回のレゼルブ・ブリュットほど強くはない。そして香りにまるみがあって優しい感じがあった。飲んだ感じも香りと同様に優しく、あたりがやわらかでそしてほどよい重みもあった。口の中の筋肉がほぐされるような、長いあいだ口に含んでいたいような心地よいものだった。じわじわと浸透してくる感じは快感だ。やはりこの口ざわりの良さは冷やしすぎては損なわれると思うので軽く冷やすくらいがこのシャンパンの良さを堪能するにはベストだと思う。喉ごしも優しく、余韻も長い。穏やかな日に穏やかな海を眺めながらまどろんでゆくような心地よさは格別だった。
味は残念だが飲んだときの感触に心を奪われてしまったのでどうだったか思い出すことができない。とにかく心地よい要素しかなかったとしか言えないのである。今度飲む機会があったら味の確認はちゃんとしなければと思うのだが、こういう優雅なシャンパンを飲むのに味はどうだ、香りはどうだなんて分析しようと試みること自体がせせこましく思えてくるので味の確認ができるかどうかは覚束ない。
食べ合わせで気がついたことがあったので、記しておく。
豚のロースに香草をまぶしてソテーしたものとの相性は良かった。イチゴとも合わせてみたが、良いとは言えなかった。イチゴの甘さでシャンパンの酸味がちょっと気になってしまい、シャンパンの味を若干損ねてしまった。見た目の取り合わせはきれいでよいのだが、口にいれるとなると別である。アーモンドチョコも試してみたが、これはダメである。シャンパンがエグイ感じになって台無しにするようにしか作用しなかった。呪うべき取り合わせである。
このシャンパンは優雅につきる。
このシャンパーニュの仕様
ブドウ品種構成:ピノノワール100%
ノンマロラクティック発酵
甘辛度:エクストラ・ブリュット
ヴィンテージ:NV
瓶内発酵後9年熟成
コメント