Francois Billion Milesime 2010 Brut(フランソワ・ビリオン・ミレジム2010・ブリュット)を飲む

飲んでみて
ミレジム2010のコルク栓
左からフランソワ・ビリオン、ドゥーツ、ゴッセのコルク栓

前回の同じ作り手のエクストラ・ブリュットはレモンをかじっているようでえらい目にあった。今回はブリュット、ミレジム2010年を飲んでみた。ミレジムはヴィンテージを意味するフランス語で原料とするブドウの収穫年のこと。単一収穫年で、熟成期間もほかのフランソワ・ビリオンよりも長く、瓶内発酵後に5年の熟成をさせている。今まで飲んだフランソワ・ビリオンの中でも最も手間ひまをかけた贅沢なシャンパンといえる。それはコルク栓が物語っている。今まで飲んだブリュット、エクストラ・ブリュットのコルク栓はコルク片を糊で固めて成型しただけのものだったが、今回は留め金のあたる部分(上部)がコルク片を固めたもので液面にあたる部分(下部)がコルクを輪切りにしたものをあてがってあり、2層構造となっていたのだ。最近になって筆者はシャンパンのコルク栓が2層構造であることに気づき、そういうものだと思っていたがフランソワ・ビリオンのノンヴィンテージのブリュットとエクストラ・ブリュットを空けたときに栓がコルク片を固めたものだけだったので、ショボイと思ったのだ。今回のミレジム2010はふつうの栓になっていた。ふつうの栓が贅沢とは変な話だが、この作り手のラインナップの中では金のかかったコルク栓であることは事実である。彼の名誉のために弁護をすると、液面にあたる部分の楔がDeutsやGossetのような大手メゾンのものよりも角度がキツイのでほかと比べても贅沢なコルク栓を使っていると言えるであろう。といってもそのコルク栓がいくらぐらいの価格であるのかはわからない。

ミレジム2010はリンゴやプロセスチーズの香りがあり、NVブリュットのパン屋の仕込み中の匂いや、NVエクストラ・ブリュットのアスコルビン酸の匂いとは違う。それぞれを飲みくらべたときに、同じ作り手のシャンパンだとはわからないだろう。ル・メニル・シュル・オジェ村で3ヘクタール(テニスコート50面分くらい)の畑でシャルドネのみを原料としているのは同じだが、収穫年の違うワインの掛け合わせ、熟成年数の違い、単一収穫年のワイン、これだけの違いでシャンパンがこうも変わってくるのは驚きであった。色はべっこう飴のようで、ノンヴィンテージのときよりも濃く、明らかに違いがわかる。

飲んだ感じはミネラル感があり、しっかりとした手ごたえがあるのだが、のどごしが軽いので余韻があっけなく、物足りない印象が残る。味わいは果物を感じさせる要素がなかった。これはどの銘柄でも共通することである。

あまりいい思いをしなかたフランソワ・ビリオンだが、この作り手のすべてのラインナップのシャンパンを飲んでみたいと思ったことは教訓になるので記しておく。

フランソワ・ビリオンのあるル・メニル・シュル・オジェ村はシャンパンの銘醸地区の一つであるコート・デ・ブランの中でも特級格付けの村であり、サロンやクリュッグのクロ・デュ・メニルといったひじょうに高価なシャンパンを産する村で、なにかそれらのシャンパンと共通するものが味わえるのではないかと、手前勝手な期待からそそられたのであった。

販売業者の説明にもフランソワ・ビリオンの創設者(当代は3代目がやっている)がサロンで30年以上も醸造長を務め、サロンの仕事と掛け持ちで自身のシャンパンを造っていたとある。さらにサロンの伝統的な造りを重んじながらもクリュッグの樽のニュアンスも加え、見事に調和をさせているとあった。しかもサロンにブドウを供給しているとあるので、サロンを感じさせる要素があるのだろうと思い込んでしまったのだ。筆者はサロンもクロ・デュ・メニルはおろかクリュッグも飲んだことはない。フランソワ・ビリオンにそういう要素を求めたとしても、はたしてそれが何であるかわからないのだ。ただ、偉大でひじょうに高価なシャンパンと共通する何かがあるというイメージだけで、自分にとって都合のいいように思い込んでしまったのだ。販売業者もそういう客の思い込みを誘導させる売り込み文句には抜かりがないので、買うさいには注意が必要だ。

よくある売り込み文句としてはあの何々(高級銘柄)の畑と隣接とか、ブラインドテイスティングで高級銘柄よりも高得点を取ったとか、そういう高級銘柄にブドウを卸しているとか、そういうたぐいの文句から客をその気にさせようとしているのだ。間違ってもサロンと同じ味とかクロ・デュ・メニルと同じ味という表現はない。まあ、夢を買って期待を膨らますことができたからいいではないかといわれればそれまでだが、そういう売り込みが多いので、そう簡単に売り手の思う壺にはまってたまるかという気概はある。

最後に販売業者のこのシャンパンのティスティングコメントを引用する。筆者はこのコメントにも期待を寄せてしまった。結局のところ飲んだことのないシャンパンは飲んでみなければわからないというもっともな結論にいたったので、少しは賢くなれたかもしれない。

以下引用

「レモンや蜂蜜のアロマ、スパイスの微香、樽由来のヴァニラのヒントが織り成す豊かな香り。きめ細やかな泡立ちが醸すシルキーな口当たり、凝縮感と複雑さが層を成し、心地良い酸化のニュアンスを伴いながら優雅なフィニッシュを迎えます。 メニル特有のエレガンスを驚くほどの芳醇さで引き出した見事な逸品です。」

ブドウ品種構成:シャルドネ100%

甘辛度:ブリュット

瓶内発酵後5年熟成

ヴィンテージ:2010年

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