今回はシャンパーニュの銘醸地コート・デ・ブランにある特級格付けル・メニル・シュル・オジェ村の作り手、フランソワ・ビリオンのブランブラン・ブリュットを取り上げる。
よく冷やした状態(氷水を張ったバケツに20分以上入れている)で栓を抜く。甘い粉っぽい香りがした。シャンパーニュが粉っぽいというのは案外なことなので、こんな印象を浮かべることとなったのはなぜだろうとしばらく考えていると、これはパン屋の仕込み中の匂いから来ていると思った。この粉っぽさはパン種を醗酵させている匂いなのだ。甘さは小麦由来の香りでベルギービールのようだ。微小なものでもよいから果物を感じさせる匂いはないかと嗅ぎまわしてみたがわからなかった。かわりにブリオッシュのような甘い香りをみつけることができた。シャンパーニュでこういう香りがあると高級なものを飲んでいるように思えてくる。悪くない。果物の甘さを探していたがこういう香りがまぎれているなら別に果物の香りはなくてもよいと思った。匂いというものは一旦、意識するとそこから離れられないものなので、粉っぽい印象はこのシャンパーニュにずっとつきまとうこととなるだろう。
飲んでみると甘さにつつまれているので強引なところはないが輪郭のある強い酸が感じられた。甘さがあるので気にするほどではない。
今回合わせたのは冷やむぎと甘えびの素揚げ。冷むぎは創味の麺つゆを水で割ったもので食べた。この組み合わせはとても良い。飽きのこない取り合わせで、しかも用意も楽だし、これからの季節には頻繁に試してみたいと思った。こういう外ではありえない組み合わせで新しい発見ができるのも家呑みの醍醐味である。甘えびのほうはシャンパーニュがエグくなって、これはすすめられない。結局、甘えびとシャンパーニュで不快になった口を冷やむぎが救ってくれた。冷やむぎはじゅうぶん口直しになる。
この作り手のあるル・メニル・シュル・オジェ村(le Mensil-sur-Oger)はエペルネの南側にくの字形にあるコート・デ・ブランと呼ばれる丘陵地帯にある。コート・デ・ブランは斜面が東向きか南向きにあるためブドウの栽培に適していて良いシャルドネの生産地として名高い。ル・メニル・シュル・オジェ村はその中でも傑出した産地で、グランクリュ格付けの村である。あのSalonのある村として覚えている。筆者は飲んだことはないが、何人かのソムリエの方からSalonがすごいと吹き込まれているので同じ村のシャンパーニュを飲んでみようと思い、この銘柄を取り上げた。前回取り上げたルネサンスは地理的に近い(おそらく隣り村)が同じブドウ品種構成であるのに全然違うので、シャンパーニュは作り手によってずいぶん変わってくるものだと思った。
このシャンパーニュの仕様
ブドウ品種構成:シャルドネ100%
甘辛度:ブリュット
ノンマロラクティック発酵
瓶内発酵後3年熟成
ヴィンテージ:NV
コメント