昨年に知って気に入ったメゾン、ルネサンスのシャルドネ100%で作るブランブラン。ボトルのデザインのように爽やかで飲んでいて軽快な気分にさせてくれるシャンパーニュだ。これを飲むとメンデルスゾーンのイタリア交響曲の冒頭の主題が聞こえてくるようだ。アレグロ・ヴィヴァーチェなシャンパーニュだ。
よく冷やした状態で栓を抜く。小気味よい音が部屋に響く。氷水を張ったバケツに入れたときからこのときを待っていたのだ。冷やし始めて20分。ちょっと焦れったい気がしてさっさと空けようかと思ったが、欲望にせかされ早まったら後悔するのは自分だ。冷えかたが甘かったらつまらないではないか。迂闊なことをやってはいけない。抑えるのだ。とにかく我慢だ。と自分に言い聞かせ待つ時間は長い。ここで自分に嫌がらせをしようと思えば砂時計があれば簡単だ。まったく焦れるくらいなら食卓から離れていればよかったのだ。こんな氷水に入れるなんて悠長なことをしたもんだ。以前フィガロで紹介のあった方法を試してみればよかったじゃないか。湿らしたキッチンペーパでボトルを包んで冷凍庫に入れる。5分入れとけば十分に冷えているという記事を読んだことがあった。来客があるのにうっかりボトルを冷やしておくことを忘れてしまったときの対処法として紹介されていた。そんな状況ってあるのかと疑問に思ったが、今みたいに待ちきれないときは有効な手だてのように思えた。今度試してみよう。キッチンペーパは剥がすときに見苦しくなりそうなので濡れ手ぬぐいで包んで入れておけばよいのだ。そんなことに悩まずに風呂にでも入っとけばよかったのだ。時の進みかたは状況によってまちまちで止まることはないのだから待てばよいのだ。20分経過した。とにかく我慢した甲斐があった。最高の瞬間を味わうことができた。軽い鼓の響きのような抜けのよい音とともに上等なメロンにレモンやライチの合わさったような、この世のものとも思われない香りが漂ってきた。それは一瞬のことだったが素晴らしい瞬間だった。その匂いよ再びと思ってグラスに注いで探してみるが、すでに失せてしまった。それでもそういう匂いを発した瓶から注がれたものなので悪いわけはない。メロンの匂いは去ってしまったが、レモンやライチの香りの後にグレープフルーツの香りが咽喉の奥のほうに残り、最後はトーストのほのかな甘い香りが長く残る。飲んだ感じは甘さよりも酸味のほうが強いがバランスが取れていて、飲んでいて気持ちがよい。
合わせたのはエビチリソースとマーボ豆腐だったがエビチリのほうがよかった。マーボ豆腐のように甜面醤が入ると、ちょっとシャンパンがエグく感じてくる。以前から思っていたが醤油や味噌のような日本の醗酵調味料は合わないのだろう。大徳寺納豆をアテにしたらエライことになりそうだ。そのエライことはいつか試してみようと思うのだった。今回はよく冷やした状態のみで、温度をあげた状態では試してみなかったが、涼やかな感じがこのシャンパンの良さだと思うので温度を上げることはしないほうがよいと思う。
このシャンパーニュの仕様
ブドウ品種構成:シャルドネ100%
甘辛度:ブリュット
ヴィンテージ:NV
コメント