Deutz Brut(ドゥーツ・ブリュット)を飲む

飲んでみて

フランス料理屋に行ってまず頼むものがある。食中に飲む発泡水バドワ(Badoit)である。その次にシャンパンが飲みたければリストにないかと探すのがDeutzである。あれば嬉しい銘柄である。

Deutzはランスの南に広がる銘醸地モンターニュ・ド・ランス(ランスの山)の南西にあるアイ村(AY)を拠点とするメゾンで1838年の設立となる。アイ村は良いピノノワールを産することで知られ、シャンパーニュ地方の320ある村のうち17しかないグランクリュ格付けの村である。グランクリュとは特級畑という意味でなく、その村で産するブドウが栽培農家とシャンパン製造者との間で取り決めた価格の満額(100%)で取引される村ということである。ちなみに取り決め価格の90%~99%で取引されるブドウを産する村はプルミエクリュ格付けと呼ばれる。プルミエクリュは42ある。村ごとの格付けで畑や区画ごとでないのが他のワイン産地と違いシャンパーニュ地方独特なところである。

メゾンの設立された1838年(天保9年)は日本では水野忠邦が老中をしていたころで天保の大飢饉や大塩平八郎の乱があったころである。モリソン号の騒ぎで渡辺崋山らが幕府を批判した̚科で牢屋に入れられたのもそのころのことである。

よく冷やした状態(氷水を張ったバケツに30分)で栓を空けるとレモンやライムやグレープフルーツの清涼感のある香りにちょっと柑橘系の甘みのニュアンスのある香りが立ちのぼる。清潔感のある涼やかな香りはDeutzを飲むたびに感じる。こういう香りは周囲を清めていくようなところがあって、とくに清潔を売りにする商売、といってもそれが何であるかはわからないが、そんなところで漂っていてほしいと願う香りだ。こういう香りをまとわせている人がいたら相当に好感度があがるだろう。清潔で暑苦しくない、そんな人物像が浮かんでくる。まったくイメージで言っているので根拠はないが、異臭を放つ雑菌や不潔な昆虫、蠅だとか蚊だとかが寄りつきそうにない匂いなのだ。

わたしは雑菌の繁殖する梅雨どきにDeutzを飲むと自分のまわりからそういった不潔なものがどっかに行ってくれるのではないかと思うことがある。衛生的に浄められていくような気になり、清々しい気持ちになるのだ。そんなことでこのDeutzを愛してやまない。

飲んだ感じはコクがあるので、何杯飲んでも飽きることなく飲める。余韻にグレープフルーツのちょっと酸味が残るのが、清潔な印象に寄与している。

飲む温度帯はよく冷やしたほうがよいと思う。30分以上放置したグラスのものも悪くはないが、清潔感を求めるならよく冷やしたほうがよい。

このシャンパーニュの仕様

ブドウ品種構成:シャルドネ34%、ピノノワール33%、ピノムニエ33%

甘辛度:ブリュット

ヴィンテージ:NV

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